真空の聲、静謐の旋律

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   β:初夜11

 がくぽの手から放たれた小さな光の球はテーブルと天井の間くらいの位置で止まり、キャンドルの炎のようにゆらめいて室内をうっすらと照らし出した。
 すっかり暗い室内に慣れていた目はわずかな明かりも眩しく感じ、ミクは慌てて両目を閉じた。その間もがくぽの唇はミクの白い首筋をなぞり、鎖骨へと下りていく。視界を閉ざした分感覚が研ぎ澄まされて、甘い口づけはより深くミクの心をとろけさせる。
「ミク……」
 切なげな吐息に肌をくすぐられ、ミクは甘い声をもらしてゆっくりと目を開いた。
 間近に微笑むがくぽがいる。見つめあって微笑みあって  引き寄せられるように唇を重ねた。
 ミクの心を探るように舌を絡ませながら、がくぽの指が器用に胸元の飾りボタンを外していく。
「んっ……」
 滞りなくすべてのボタンを外し終え、そこから手を滑り込ませてミクの柔らかな肌の感触を楽しんだ。切なげに喘ぐミクを押さえつけたまま、彼女の吐息ごと口の中を蹂躙し尽くす。少し苦しそうに抵抗されて名残惜しげに唇を離せば、潤みきった蒼い瞳が意地悪そうにのぞき込む藤色の瞳を見上げていた。
 言葉も何もいらない。その瞳がすべてを物語っている。
「ミク」
「ん……」
「きれいだ」
「ふぇ……」
「愛してる……」
「うん……」
 ミクの膝丈のワンピースの裾を掴むと、一気に捲りあげてすぽんと引き抜いた。途中、肘がひっかかってミクが小さな悲鳴を上げたが、すぐにワンピースは主から引きはがされて床へと放り投げられる。その下にもう一枚着ていた少し長めの肌着も簡単に引きはがされてワンピースの後を追うように床へと落ちた。
 あっと言う間に下着姿にされてしまったミクは、恥ずかしそうに自分を抱きしめて  おずおずと右手でがくぽの左胸に触れた。
「鼓動がわかるか?」
「どきどきしてる?」
「ああ……どきどきしてる」
「がくぽも緊張したりするの?」
「俺だって緊張ぐらいする」
「だっていつも落ち着いてるから……」
「ミクに嫌われたらどうしようかと、不安で不安で仕方がない」
「変なの。嫌うわけないじゃない」
「そう願いたい」
 微笑んで、ミクの首筋に喰らいつくように口づけた。甘い吐息とともに白い首筋を反らせて、ミクががくぽを抱き寄せる。
「……おなか、すいてるんでしょう?」
「さっきから腹の虫が鳴きっぱなしだ」
「じゃあ……、ちゃんとおいしく食べて……」
 優しく藤色の髪をなでてがくぽを誘えば、
「……、お言葉に甘えさせてもらう」
 熱い唇が首筋から鎖骨へと這い、髪と舌がミクの肌を甘くくすぐる。
 大きく温かな手でなでられて、ミクは閉ざしていた膝をそっと開いた。がくぽの手が優しく静かにミクの細い脚をなで上げていく。
 髪と唇と舌と手と吐息と  がくぽに触れられる度に、もっと触れられたいという想いが募る。もっと激しく、もっと優しく、もっと奥深くまで  
 触れられたところから微熱を帯びて、肌の表面から身体の奥へ奥へと伝わり、ミクの身体の奥底に閉じこめられたものをひとつずつ解き放っていく。
 腰から、背中から、胸から、腹部から、解き放たれてミクの身体をどうしようもなくざわめかせる。それがどういうことなのか、もうミクは理解している。
「がくぽ……、あのね」
 ざわりざわりと女の血が騒ぐ。昨晩のとろけるような甘い感覚がミクの中の女を目覚めさせる。ただ、昨晩のような無理矢理に引きずり出される感覚はない。少しずつ、がくぽの誘いに応えるように  花のつぼみがゆっくりと花開くように  緩やかに導かれていく。
「……好き、……」
 囁きに答えるようにがくぽがミクの控えめな胸を甘噛みして、くすぐるように舌先で転がした。
「ひゃっ……」
 可愛らしい小さな悲鳴とともに身体をびくりと震わせながら、藤色の髪をやさしくなでる。がくぽの舌が急かすでもなく慈しむようにミクの胸をなぞる度に、可愛い悲鳴を甘い吐息に変えながら幾度となくがくぽをなでた。藤色の髪を、首筋を、肩を、背中を。触れ合う肌が心地良い。
「……ねえ」
「ん……」
「やっぱりもうちょっと大きい方がいい?」
 拗ねるようにミクが呟く。
「大きいことが正義じゃない。俺は特に気にしない」
「そう? だってこう、ぎゅーってしても」
 両腕でがくぽを強く抱き寄せて、
「……骨に当たって痛くない?」
 胸の谷間と呼ぶには傾斜が緩いその場所に顔を押しつけられているがくぽをのぞき込む。
「痛いというほどじゃないが……」
「ほどじゃないが?」
「嫌いじゃない」
「……」
「胸の大きさが変わることで今のミクが何らかの形で変わってしまうのだとしたら、そっちの方が辛い」
「胸の大きさくらいで変わるかな?」
「それだけ気にしているのなら変わる可能性も否定できまい。俺は今のミクが好きだ。変わらないでいて欲しい」
「うん……」
「それに大きすぎても手に余る。これくらいで丁度良い」
 がくぽの左手がミクの右胸を、唇が再度左胸を包み込んだ。指先と舌先で転がされて思わずため息がもれる。
「好きだ……」
「ん……、……」
「ミク……、……?」
 見慣れないものを見つけてがくぽが言葉を途切れさせた。
 ミクの左胸より少し下の脇あたりだろうか。昨晩にはなかった小さな赤い痕がある。
(……何だ?)
 指でなぞっても虫に刺されたような痕跡はない。
「どうしたの? 何かついてる?」
「……いや……。どこかで引っかけたのか?」
「え……あっ……? 別に、何も」
(あの娘の仕業か)
 一瞬思い当たることがあったような表情をしたミクを見て、がくぽは瞬時に思い当たる。孤児院に風呂を借りに行ったとき、あの赤毛の娘は一緒に入ろうと言っていた。
(一体風呂で何をしてたんだ……?)
 ミクによからぬことを吹き込んだとしたらその時だろう。その時に、言葉だけでなく  何をした?
 胸の奥がちりちりとする感覚に、がくぽははっきりと自覚する。
 これは嫉妬だ。
 相手が男であろうが女であろうが、他の誰かがミクに触れること自体が許し難い。ミクは自分だけのものだ。誰にも触れさせたくはない。
 ミクの肌にあるのはどこからどう見ても唇の刻印だ。指先が触れるだけでも許せないのに、相手がミクの幼なじみであろうが唇を這わせるなど、到底許せるものではない。
(挑発されてるのか)
 これは赤毛の娘からの挑戦状だ。がくぽの嫉妬心を駆り立てて、さあどうする? やれるものならやってみろと、そう叩きつけられているのだ。
(面白い。受けて立とうじゃないか)
 訝しむミクの前でがくぽはニヤリと笑って  すでに刻まれている唇の刻印のすぐ横に唇を這わせた。前置きも何もなく、きつく吸い上げる。
「やぁ……っ」
 痛みに身をよじりながらも濡れた吐息がもれる。
 唇を離せば、そこには先の印よりもくっきりと赤い印が刻み込まれている。がくぽはそれだけでは満足せず、そのすぐ側に再度唇を這わせてきつく吸い上げる。それを幾度も繰り返し  その度に甘い悲鳴が上がり、ミクの指が藤色の髪を絡めとって引っ張ろうとしたが、がくぽがそれよりも早くミクの指に自分の指を絡ませて優しく押さえつけた。
「あ……、んん、やああ……っ、はぁ……」
 ようやくがくぽの唇と拘束から解放されて、ミクが大きくため息をついた。元の印の周囲を囲むようにいくつもの赤い刻印がなされ、がくぽが満足気に指でなぞる。
「もう……、何? 何なの?」
 涙目でミクが訴えれば、
「何だ。泣きたかったら泣いてもいいぞ」
 意地悪くがくぽが笑う。
「……っ。泣かない」
「いいのか。後悔するなよ」
「泣かないったら泣かない」
「ほう。良い心構えだ。先に言っておくが、泣いてやめてくれと懇願されればやめないでもない」
「泣ーかーなーいー!」
「よし。聞き届けたぞ」
 がくぽがニヤリと笑ってミクの胸の谷間に唇を這わせた。ミクが吐息をもらす間もなく唇の印を刻みつける。
「これは印だ」
「何のしる……んっ」
「ミクは俺のものだ。俺だけのものだという印だ」
「は……、あ、や……」
「他の誰にも……渡さない」
「あぁ……」
 がくぽの囁きはミクの心をとろけさせるのに充分すぎるほどだった。痛みさえ覚えたはずの刻印が愛の印となって甘く疼く。
「もっと印をつけてもいいか?」
「ん……好きなだけ……、」
 その先を待たずにがくぽがミクの胸の下に、鳩尾に、腹部に愛の印を刻みつける。
「あれ……? ねえ、ちょっと待って……」
「どうした」
「これって要するに……あ、『俺のものだから勝手に触るな』って、や、待って、あ……! ……、ってことだよね……?」
「そうだ」
「だったら、服で隠れちゃうところにつけても解らないんじゃない?」
 顔を上げたがくぽに乱れた息でミクが問う。
「『勝手に触るな』は普段隠れているお前の肌を見ようとする相手にだけ伝わればいい。別に酒場の常連たちに見せびらかす必要はない」
「んんー……?」
 隠れている部分の肌を見るということは、ミクが自分から見せるのでなければ強引に衣服をはぎ取っているということだ。そんな相手が印を見たところで怯むだろうか。
 がくぽの言葉に疑問を抱きつつも、正解にたどり着く前に右大腿部の内側に愛の印を刻みつけられて疑問はどこかへ吹き飛んでしまった。
「は……、あ」
「お望みなら首筋でも腕でも  好きなところに印をつけるが?」
「それは……遠慮します」
「そうか」
 少し残念そうに呟いて、がくぽがたった今愛の印を刻んだ場所に優しく口づける。
 ミクの甘い吐息を聞きながら、少しずつ口づけの位置をずらしていく。より内側へ、より奥深くへ  
「え……、あの……? え?」
 一端顔を上げたがくぽが、ミクが抵抗する間もなくひどく水気を帯びた下着を彼女の細い足から抜き取って床に投げ捨てる。
「あ……」
 再びがくぽの唇がミクの内股を這う。感覚を研ぎ澄まされたように敏感になっていたそこに、唇より先に髪が触れた。ぎくりとして強ばらせた足はがくぽの両手で押さえ込まれる。
「ちょっと……、」
 熱い吐息にくすぐられて腰が引けたが、袋小路に追いつめた兎を捕らえるよりも容易く  がくぽの舌が、触れた。
「待っ……、きゃあっ!?」
 触れられたところから一気に全身に稲妻が疾る。驚いて足を動かそうとしたが強く押さえ込まれて身動きができない。
「え、あの、待って!? だって、そんな……、ひゃ、あ、やああん!」
 触れるか否かのぎりぎりの距離から徐々に、焦がされそうな熱が伝わるほどにがくぽの舌が強く深く捉えてくる。
「やめ、あの、がくぽ待って……、きゃ……っ!」
 ミクの困惑など意に介さず、がくぽの舌が、唇が、吐息が、触れるそこからミクの女をおびき寄せようと誘惑する。
「待って、ねえ待って!?」
 後ずさりしようとして自分の両手が解放されていることに気づいたミクが、慌ててがくぽの髪に指を絡ませる。それを引っ張るよりも早くがくぽが顔を上げて心配そうに、
「……痛むのか」
「え……、あ、ううん……。痛い訳じゃないんだけど……」
「じゃあ続けていいか」
「ふぇ!? や、あの、だってこんなの……、聞いてない……」
「……聞いてない?」
 ミクの言葉にかすかに眉間にしわを寄せる。
 聞き返されて一瞬しまったという顔をしたミクだったが、がくぽがニヤリとした意味が分からずにうろたえる。
「そうか。事前に説明が必要だったか。じゃあ遅くなったが今から説明しようか。ミクのどこに何をしているのか、その行為から期待する効果と……」
「いいえ! いいえ大丈夫です! 説明していただかなくても問題ありません!」
 慌ててミクが激しく首を横に振れば、がくぽが残念そうにそうか、と笑った。
「で……痛くないなら続けていいか?」
「あ、あの、痛くはないけど、すごい恥ずかしいんですけど……」
「嫌か」
「嫌っていうか、えっと……くすぐったい……かな……」
「だがこれは挨拶なんだろう」
「え、あ、え?」
「さっきミクも挨拶してくれただろう。それと同じだ」
「あー……、ん、あれ?」
「俺もちゃんと挨拶しておきたい。ダメか?」
「ダメじゃ……ないけど……」
 小首を傾げるがくぽの仕草の可愛らしさに一瞬目が眩みそうになったが、少し考えてから小さく首を横に振る。
「だって……この格好、恥ずかしい……」
 両足を大きく広げて、その間にがくぽが顔を埋めている。その様子を揺らめく光が照らし出し、行為を妖しく浮かび上がらせていた。
「そうか……」
 身体を起こしてがくぽが顔を真っ赤にしているミクを見下ろして少し思案し、
「よし。じゃあもっと恥ずかしい格好をしてみるか」
「は!?」
「そうすれば今の格好が恥ずかしくなくなるだろう」
「え、何その理屈!? あり!? そんなのあり!?」
「ありかなしかで言えばありだ。どうする? このまま続けるか、それともさっきの提案を受け入れるか」
 俺はどちらでも構わんが、と楽しげに笑った。
「あの……、じゃあ、このままで……」
 涙目で答えたミクの右手を捕まえて、がくぽは再び自分の髪に触れさせた。先刻ミクがそうしたように、これからすることを続けて欲しいかやめて欲しいかを問うために。
 ミクが息を飲みながらも頷いたのを見て、がくぽは優しく微笑んで彼女の頬をなでた。頬から首筋、鎖骨の間を通って指を滑らせながら再びミクの足の間に顔を埋める。
「んんー……」
 藤色の髪をなでるでもなく引っ張るでもなく指に絡めて弄びながら、ミクは盗み見るようにがくぽを見つめた。
 うつむき加減のがくぽの表情は影になっていることもあり、目を開いているのかどうかも解らない。時折ぴちゃりと音を立てながら、ゆっくりと味わうように、くすぐるように、がくぽの舌が優しくなぞる。
(なんか……お腹がもぞもぞする……)
 下腹部を中心に身体がざわついて熱を帯びていく。それが何を意味するのか、ミクは昨晩身を持って知ってしまった。知らなかった頃にはもう戻れない。痛みと辛さの奥深くにある悦びの記憶は、薬の副作用がなくてもミクの女を呼び覚ます。
(私……あ……、ダメ、今はもぞもぞするだけだけど……、これ多分……、その内……)
 藤色の髪を弄んでいた指はいつの間にか動きを止め、強ばっていた脚が徐々に弛緩していく。
 がくぽの手はミクの脚の拘束を解き、左手で細い腰周りから大腿部までを優しくなだめるようになで上げる。
「は……、あ……」
 くすぐったげな可愛らしい悲鳴が甘い吐息に変わる頃、がくぽの指先がミクが滴らせている蜜の感触を確かめるように忍び込んだ。
「ひゃあんっ」
 背筋をかすかに反らせてミクが歓喜の悲鳴を上げれば、応えるように指先が蜜色の旋律を奏でる。穏やかで優しい子守歌のような指の動きはひどく焦れったく  ミクの身体のざわめきは全身に及んで焦燥感を駆り立てる。
(ダメ、なんかもう、本当にダメ……)
 がくぽが欲しくて欲しくてたまらない。身体中ががくぽに触れられたがっている。肌も、吐息も、唇も、何もかも  もっと奥まで満たされたい。この手の施しようがないほどの焦燥感を何と言うのか、どうすれば満たされるのか、もうとっくに解りきっている。
(もう  お願い、早く……)
 その想いを昨晩のように言葉にするには勢いが足りなかった。欲しいと思う気持ちとそれを恥じらう気持ちとが拮抗して、わずかに後者が勝った。言葉にしてしまえば楽になれるのに、言葉にしようとすればするほど口の中がからからに乾いて言葉を紡ぐことができない。焦る気持ちだけが空回る。
「がくぽ……、……あ、きゃ……」
 指で奥までかき乱されて、息が弾み頭が真っ白になって何も考えられない。どうすれば自分の想いを伝えられるのか、言葉にする手段さえ頭の中から抜け落ちていく。
「ひゃ、あ、あの、や……、待っ……」
 かすかにこびりついていた理性がミクに小さなルールを思い出させる。
 指先に絡ませていた藤色の髪を、強く引っ張った。
「……どうした」
 がくぽが身体を起こして心配そうにミクの顔をのぞき込む。
 顔を紅潮させ、息は弾み肌に汗を浮かび上がらせたミクは、潤みきった瞳で恨めしそうに藤色の瞳を見つめた。
「痛むのか」
「……、違う……」
 息を整えながら、がくぽの腕を掴んで引き寄せる。素直に引き寄せられるままにミクを抱きしめれば、細い脚ががくぽの腰に絡みついてくる。
「ミク」
「ずるい」
「……ほう」
「解ってるくせに……」
「俺は求められたい。求められている実感が欲しい。……お前の声で、お前の言葉で……求められたい」
「……ずるい、そんなの……私だって……。私だってがくぽに求められたい……」
「こんなに切実に求めているのにか?」
「私だって……、あなたの声で、あなたの言葉で……、求められたい……」
 かすれた声で訴えられて、がくぽは自嘲する。
「そうだな。俺ばかりわがままを言う訳にはいかんな」
 ミクの柔らかな頬に手を触れて、首筋から肩へと優しくなでる。その跡をなぞるように頬から首筋へと口づけて耳元で吐息混じりに囁いた。
「お前のその眼差しも声も……濡れた吐息も流れる髪も、心も身体も何もかも、全部独り占めしたい。俺のすべてを見せてやる、だからお前のすべてを俺の前にさらけ出してくれ。俺はお前のすべてを知りたい。すべてが欲しい。何もかも、全部だ。俺の全部をくれてやる。だからミクの全部を俺にくれ」
 その言葉だけで身体の奥までとろけさせられる。追い打ちをかけるようにがくぽの舌が耳の中までかき乱し、耐えきれずにミクの唇から男を誘う女の吐息がもれる。
「あ……、私の、ぜんぶ……? ずいぶんと……欲張り、だね……」
「ダメか」
「ううん……、奇遇ね、私も……、はぁ……、同じきもち……だから、」
 がくぽの目の前でミクが微笑む。揺らめく光に照らされたその笑みはどこまでも汚れなく、どこまでも妖艶だった。
「がくぽの全部を……、くれる、よね?」
 がくぽの腰に絡ませた脚に力を込める。
「……、ミク……愛してる」
「愛して……いっぱい、がくぽ……」
 誘われるままに清らかで美しく、愛らしいくせにどこまでも淫らな唇を思う存分貪った。
 甘い果実の芯まで残さず喰らい尽くしてしまいたいという欲望のままに  
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